日頃家具レイアウトのご相談を受けていて意外と多いのが、
「新築へ引っ越して5年後くらいに相談に来られる」というパターンです。
まだ新しい家のはずなのに、なぜ?と思いますよね。
新築で家を建てたり、購入したりしたものの、
家具のレイアウトがうまくいかない。
自分たちで試行錯誤しながら悩み、
それでも解決できずに、ようやく相談に来られる。
そういった方が、結果的に
住み始めてから5年ほど経っているケースがとても多いのです。
「住み始めてからの違和感」としてよく聞くのが、
- 家具が置きづらい
- なんとなく居心地が悪い
- 使いにくい理由がはっきりしない
間取り自体が大きく間違っているわけではない。
設備も新しく、部屋もきれい。
それなのに、なぜか落ち着かない。
この違和感の多くは、家具レイアウトを
深く考えるタイミングに原因があります。
「家具は後で考えればいい」がうまくいかない理由

まず最初にお伝えしておきたいのは、
「家具を後で考える」という考え方自体は、
必ずしも間違いではないということです。
新築の場合、確認申請を通すために、
まずは間取り、柱や壁、窓などの開口部の位置やサイズを
優先して決める必要があります。
リノベーションでも、構造や設備、法規の条件から
先に固めなければならない部分があります。
そのため、手順として家具の詳細を後回しにするのは、
ある程度仕方がない面もあります。
ただし問題なのは、「後回し=ほとんど考えない」
状態になってしまうことです。
家具レイアウトは、家が完成してから
急に考え始めるものではありません。
自分たちがどう暮らしたいのか、
どこでくつろぎ、どこで食事をし、
どんな家具配置になるのか。
このイメージを、設計の初期段階から
しっかり想像しておくことが重要です。
住宅会社・施工会社主導の打ち合わせ構造
新築やリノベーションの打ち合わせは、
ほとんどの場合、住宅会社や工務店などが主導して進みます。
そのため、打ち合わせの中心になるのは、
- 間取り
- 設備
- 収納の位置
- 窓や建具の配置
といった、建物として成立させるための要素です。
これは決して間違った進め方ではありません。
住まいをつくる以上、まず優先されるべき内容だからです。
ただし、この流れの中で、
家具やレイアウトはどうしても後回しになりがちです。
家具は「建物そのもの」ではないため、
どこまでが設計者の範囲か
どこからが住み手の判断か
が曖昧になりやすく、結果として
住み手任せになりやすい構造があります。
打ち合わせ中に
「家具は住んでから考えましょう」
「まだ決めなくて大丈夫ですよ」
と言われることも多く、
それを聞いて、
「そういうものなんだ」と思ってしまう方も少なくありません。
この時点で、家具配置やレイアウトを
深く考える機会が一度途切れてしまう
ということが起こります。
住み手としては、
プロが進めてくれている
図面もきれいにまとまっている
という安心感があります。
一方で、
- どこでくつろぐのか
- どこに家具を置くのか
- その結果、どう動くのか
といった暮らしの具体像は、
まだ十分に整理されていないまま進んでしまうのです。
この「構造上のすれ違い」が、
住み始めてからの違和感につながる
最初のきっかけになることが多いのです。
家具=インテリア=最後の楽しみ、という認識
家具の話になると、多くの方が
「インテリア」という言葉を思い浮かべます。
色や素材、デザイン。
北欧風がいい、ナチュラルが好き、シンプルにしたい。
こうした見た目のイメージは、比較的早い段階から持っている方も多いです。
しかしながらその一方で、
家具レイアウトやサイズなど、より具体的な話は
「住んでから考えても問題ないもの」
という認識になりがちです。
確かに、
どのブランドにするか、
どんなデザインにするか、
という意味では、最後に決めても構いません。
ただ、この考え方の中で、
抜け落ちやすい視点があります。
それが、家具を「置いたあとの状態」を
具体的に想像する、という視点です。
ソファを置いたら、
人はどこを通るのか。
ダイニングテーブルを置いたら、
椅子を引くスペースは足りるのか。
テレビを見る位置は、自然な姿勢になるのか。
家具をインテリア=見た目の話として捉えていると、
こうしたレイアウトや動きの視点が後回しになりやすくなります。
結果として、
デザインは気に入っている
家具単体としては問題ない
それなのに、
「なんとなく使いづらい」
「落ち着かない」
という状態が生まれます。
家具は、
空間を飾るためのものではなく、
日常の行動を受け止めるための道具です。
この認識のズレが、
住み始めてからの違和感につながっていきます。
家具は「飾り」ではなく「暮らしの土台」

家具というと、どうしても
「部屋をおしゃれに見せるもの」
「インテリアの仕上げ」
というイメージが先に立ちがちです。
けれど、実際の暮らしの中で家具が果たしている役割は、
それよりずっと根本的なものです。
ソファは、ただ座るためのものではありません。
家族が集まる場所であり、
くつろぐ姿勢を決め、
会話の向きや距離感をつくります。
ダイニングテーブルは、
食事をするためだけの家具ではありません。
子どもが宿題をしたり、
ちょっとした作業をしたり、
家族が向かい合う時間を生み出します。
収納家具も同じです。
どこに、何を、どの高さにしまうかで、
片付けやすさも、散らかりやすさも変わります。
つまり家具は、人の行動や居場所、その家での過ごし方そのものを
決めていると言っても過言ではありません。
この「暮らしの土台」としての視点が抜けたまま家具を考えると、
どうしても後から無理が出てきます。
- なぜかその場所に人が集まらない
- くつろげるはずのリビングが落ち着かない
- 片付けてもすぐ散らかる
こうした違和感は、センスの問題ではなく、
家具と暮らしの関係が整理されていないことから生まれることが多いのです。
家具は、部屋を飾るための「最後の要素」ではなく、
暮らしを支える「最初の土台」。
この認識を持てるかどうかが、
住みやすさを大きく左右します。

家具を置いて初めて、間取りは完成する

平面図、より分かりやすく言い換えるならば「間取り図」は、
家づくりにおいてとても大切なものです。
部屋の広さや配置、収納や動線を確認するための、
基本となる資料でもあります。
ただし、間取り図はあくまで
「何も置かれていない状態の空間」
を示しているにすぎません。
そこにソファやテーブル、収納家具が入って、
人が座り、歩き、物を使い始めて、
初めて「暮らしの場」として機能し始めます。
つまり、家具が入って初めて、
間取りは完成するということです。
図面の段階では広く見えていたリビングも、
家具を置くと想像以上にコンパクトに感じることがあります。
通路の幅や、視線の抜け、
人が立ち止まる場所や動く場所は、
家具の配置によって大きく変わります。
それにもかかわらず、家具の存在を深く考えないまま
間取りを確定させてしまうと、住んでから「調整」で
何とかしようとすることになります。
- 家具のサイズを妥協する
- 本当は置きたかった家具を諦める
- 動線の悪さに慣れてしまう
こうした選択は、
最初に間取りを決める段階で
家具を少し具体的に想像していれば、
避けられた可能性が高いものです。
平面図は完成形ではなく、
家具が入ることを前提とした「途中段階」。
そう考えるだけでも、
設計図の見方は大きく変わってきます。
家具後回しが生むズレの入口

家具を後回しにしたことで起こる問題は、
いきなり大きな失敗として表れるわけではありません。
多くの場合、「ちょっとしたズレ」から始まります。
よくあるのが、
「このくらいの家具なら入るだろう」
「多分置けると思う」
という、感覚的な判断です。
図面上では問題なさそうに見えても、
実際に家具を置いてみると、次のようなことが起こります。
- 置きたい家具を置くスペースが足りなかった
- 家具を置いたら通路が思った以上に狭くなった
- 多分置けるだろうと考えていた場所に、実際は置けなかった
これらが起こった原因は、家具を置いた状態の空間を、
具体的に想像できていなかったことにあります。
家具のサイズはカタログやネットで確認できますが、
それが空間の中でどう感じられるかは、
実際に置いてみないことには分かりません。
よく分からないまま家具を購入した結果、
- 通りづらいのを我慢して生活する
- 配置を変えて何とかしようとする
- 家具が大きすぎたので買い換える
- 本来使いたかった場所を諦める
といった「調整」が始まります。
この段階では、まだ大きな不満として意識されないことも多く、
「こんなものかな」と受け入れてしまいがちです。
しかし、この小さなズレが積み重なることで、
後々の違和感や使いづらさにつながっていきます。
家具を後回しにすることで生まれるズレは、
住み始めてから少しずつ広がっていく入口
だと言えるでしょう。
間取りと家具レイアウトが噛み合わない家で起きること
ここからは、家具を後回しにした結果、
住み始めてから表面化しやすい問題を整理していきます。
どれも設計段階では気づきにくく、
「住んでから初めて分かる」ことばかりです。
図面上は問題ないのに、住んでから感じる違和感
間取り図を見ているときには、
部屋の広さも足りている
収納もある
動線も使いやすそう
と、特に問題がないように見えます。
それでも実際に暮らし始めると、
- なんとなく落ち着かない
- 居心地が悪い
- どこにいてもしっくりこない
という感覚が出てくることがあります。
この違和感はとても曖昧で、
「どこが悪いのか説明できない」ことがほとんどです。
図面と実生活の間にあるギャップが、
この言語化しづらい「落ち着かなさ」を生み出します。
ソファ・ダイニング・TV配置のズレ
特に影響が出やすいのが、
リビング・ダイニングまわりの家具配置です。
- ソファを置いたら通路が思ったより狭い
- ダイニングチェアを引くとぶつかる
- テレビを見る位置が不自然で、姿勢が落ち着かない
家具単体では問題がなくても、
配置したときの関係性でズレが生じます。
毎日使う場所だからこそ、
小さな違和感が積み重なり、
じわじわとストレスになっていきます。

普段いる場所、使いたい場所にコンセントがない
家具レイアウトを深く考えていないと、
コンセントの位置もズレやすくなります。
よくあるのが、
- ソファでスマホを充電したい
- リビングでパソコンを使いたい
- ホットプレートを使いながら食事したい
- 間接照明を置きたい
といった、「実際に使いたい場所」と
コンセントの位置が合っていないケースです。
延長コードで対応することもできますが、
それが日常になると、
見た目も使い勝手も悪くなっていきます。
通路が狭い/動線が交差する
図面上では問題なく見える通路も、
家具が入ることで印象が大きく変わります。
- 人がすれ違いにくい
- 家族の動線が交差する
- 家事をするのにスムーズに動けない
人は多少避けることができますが、
家具は動いてくれません。
家具を基準に考えていないと、
こうした動線のストレスが日常的に発生します。

収納は足りているのに使いづらい
「造り付けの収納は多めに作ったはずなのに、足りない」
という声もよく聞きます。
実際には、
造り付けの収納はある
図面上、十分な収納スペースが取れているように見える
それでも、思った以上にモノが入らない
というケースは少なくありません。
原因の多くは、何をどこにしまうか、
使いたい場所に使いたいものが収納できるのか、
十分に想定されていないことです。

模様替えしても解決しない理由
こうした違和感が出てくると、
「配置を変えれば何とかなるのでは」と思い、
模様替えを繰り返す方も多いです。
しかし、原因が間取りと家具レイアウトの関係にある場合、
模様替えでは根本的な解決にはなりません。
「なんとなく落ち着かない家」になるメカニズム
これらのズレが重なると、
- くつろげる場所が定まらない
- 家族が自然に集まらない
- 片付けてもすぐ散らかる
といった状態になります。
一つひとつは小さな違和感でも、
積み重なることで「なんとなく落ち着かない家」
になってしまうのです。
まとめ
新築やリノベーションで、
「間取りはしっかり考えたはずなのに、なぜか住みづらい」
と感じてしまう家には、共通する理由があります。
それは、家具レイアウトを考える
タイミングが後回しになってしまったこと。
家具は、最後に選ぶインテリア要素ではなく、
暮らし方や居場所、動線を形づくる土台です。
間取りと家具レイアウトは、
本来セットで考えるべきもの。
家具のデザインやテイストは後からでも構いませんが、
大きさや配置、使い方のイメージは、
設計の早い段階で立ち止まって考えておく必要があります。
住み始めてから感じる違和感は、
センスや好みの問題ではありません。
「なぜか落ち着かない」
「使いづらい理由が分からない」
その背景には、必ず原因があります。
もし今、間取り図を見ながら少しでもモヤっとした感覚があるなら、
それは見過ごさないほうがいいサインかもしれません。
次の記事では…
次回は、プロがどんな視点で間取り図を見ているのか、
もう一歩踏み込んでお話しします。
家具のサイズをどう当てはめるのか、
動線をどこから読み取るのか。
「間取り図をどう見ればいいのか分からない」
という方に向けて、設計やインテリアの現場で
実際に行っている考え方を、
できるだけ分かりやすく整理する予定です。



