前回の記事では、
「間取りは問題ないのに、なぜか落ち着かない家」
が生まれやすい理由についてお話ししました。
では、どう考えておけば、その違和感は減らせたのでしょうか。
家づくりやリノベーションの打ち合わせで必ず目にするのが、
いわゆる「間取り図」です。
正式には平面図と呼ばれる図面ですが、
ここでは分かりやすく「間取り図」と呼びます。
この間取り図を、「何も置かれていない空間」として見るのか、
それとも家具が入った状態を前提に見るのか。
その見方の違いが、住み始めてからの使いやすさや居心地に大きく影響します。
この記事では、特別な知識がなくてもできる、
間取り図を見るときの考え方とコツを整理していきます。

間取り図を見るときに意識したい、最初の視点
間取り図の見方に、決まった正解があるわけではありません。
住み方も、家族構成も、価値観も人それぞれです。
ただ、間取り図を「部屋の配置図」として見るのではなく、
この家でどう暮らすか、どこに家具を置き、どう過ごすかを
思い浮かべながら図面を見ていたかどうかは、
結果として、住み心地の差として表れてくることが多いです。
図面を見るとき、最初にやっておきたいこと
間取り図を見ると、つい最初に目がいくのが、
部屋の数や広さではないでしょうか。
- リビングは何畳あるか
- 寝室と子ども部屋は合計何部屋か
- 収納はいくつあるのか
もちろん、これらも大切なポイントです。
ただ、ここで一度立ち止まって、
「この部屋で、どう過ごすか」
も合わせて想像してみてください。
- 家族はどこに集まるのか
- 食後にのんびりする場所はどこか
- パソコン作業は、どのあたりでするのか
このとき、「きれいな空間」を思い浮かべる必要はありません。
- ソファに座る姿勢、
- テーブルを囲む家族の位置、
- 人が立ち上がって動く様子。
こうした生活のワンシーンを、
間取り図の上に重ねていくイメージです。
部屋の広さを数字で判断する前に、
まずは「そこで起きる暮らし」を思い描く。
これだけでも、間取り図の見え方は大きく変わってきます。
家具サイズを当てはめて考える理由

暮らしを想像するときに、
とても助けになるのが、家具のサイズです。
すべての家具を決める必要はありません。
まずは、生活の中心になりやすいものだけでも十分です。
たとえば、
- ソファ
- ダイニングテーブル
- テレビ台
- 大きめの収納家具
こうした「大きな家具」は、
空間の印象や使い方を大きく左右します。
間取り図の上に、
それぞれのおおよそのサイズを当てはめてみると、
- 思ったより場所を取る
- 通路が狭く感じる
- 人の動きとぶつかる
といったことが、事前に見えてくることがあります。
図面上では広く見えていた空間も、
家具が入ることで、ぐっと現実的なサイズ感になります。
これは、「この間取りはダメ」という話ではありません。
家具が入った状態を想像した上で、
それでも心地よいかどうかを考える
というプロセスが大切、ということです。
家具のサイズを当てはめることで、
間取り図は一気に「暮らしの図」に変わります。
動線は「人の動き」+「家具まわりの余白」で考える

動線という言葉から、人が歩くルートだけを
思い浮かべる方も多いかもしれません。
けれど、実際の暮らしでは、人の動きだけでなく、
家具の存在が動線に大きく影響しています。
間取り図を見ているときには問題なく感じても、
家具が入った途端に
「なんだか通りにくい」
「動きづらい」
と感じることは、決して珍しくありません。
ここでは、人の動きに加えて、
家具まわりの余白も含めて動線を考える、
という視点について整理していきます。
家具は動かない、という前提で考える
人は、多少のことなら避けて動くことができます。
少し体をひねったり、遠回りをしたりすることもできます。
一方で、家具は基本的に動いてくれません。
ソファやテーブル、収納家具は、一度置いたら、
日常の中で頻繁に動かすものではないからです。
この前提を意識していないと、
間取り図では問題なさそうだった通路が、
実際にはとても窮屈に感じることがあります。
たとえば、
- ソファの横を通るときに体をよける
- ダイニングチェアを引いたままでは通れない
- 扉を開けた状態だと動線が塞がれる
といった場面です。
図面上では、通路幅が確保されているように見えても、
家具が入ることで人が実際に動ける余白は、想像以上に小さくなります。
ここで大切なのは、感覚だけで判断しないこと。
「このくらいあれば大丈夫そう」
という印象ではなく、
通路として〇cm確保できるから大丈夫
といったように、数字で余白を確認することで、
動線の心地よさはかなり安定します。
心地よい動線は、センスではなく、
ある程度「数字」でつくることができる。
そう考えると、間取り図の見方も、少し変わってくるはずです。

生活動線・家事動線が噛み合わなくなる瞬間
家具まわりの余白を十分に想像できていないと、
生活動線や家事動線が、少しずつ噛み合わなくなっていきます。
図面を見ている段階では、「問題なさそう」
と感じていたはずなのに、実際に暮らし始めると、
日常の中で小さな引っかかりが生まれてくるのです。
よくあるのが、次のような場面です。
- ダイニングチェアを引くと、後ろを通れなくなる
- キッチンとダイニングの行き来で、人と人がぶつかる
- 扉を開けた状態だと、通路が塞がれてしまう
- 配膳や片付けの動線が遠回りになる
どれも、「致命的な失敗」というほどではありません。
でも、毎日のこととなると、
じわじわとストレスになります。
こうしたズレが起きやすい理由のひとつが、
図面を見るときに「家具を置いた上で、その周りを動いている状態」
を想像しきれていないことです。
椅子を引いた瞬間、
人がすれ違うタイミング、
扉を開け閉めする動き。
これらは、図面の上では止まった状態で描かれているため、
意識しないと見落としやすいポイントです。
また、家事動線についても同じことが言えます。
- 料理をしながら、どこを通って配膳するのか
- 洗濯物をどこに干し、どこにしまうのか
- 掃除のとき、家具のまわりをどう回るのか
家具が入った状態で考えていないと、
「動けるはず」の動線が、
実際には動きづらい動線になってしまうことがあります。
間取り図上で線を引いただけの動線と、
家具が入ったあとの実際の動きは、
必ずしも一致しません。
だからこそ、人の動きだけでなく、
家具が置かれた状態での余白や重なりまで含めて、
一度立ち止まって考えてみることが大切です。
この視点があるだけで、
「住んでからの微妙な使いづらさ」は、
かなり減らすことができます。
コンセント・スイッチは「家具配置」から考える

住み始めてから
「ここにコンセントがあればよかったのに」
と感じる場所は、意外と多いものです。
コンセントやスイッチの位置は、
間取り図だけを見て決めてしまうと、
実際の暮らしとズレやすいポイントでもあります。
その理由の多くは、家具配置を前提に考えられていないことにあります。
なぜ「使いたい場所にない」が起きるのか
コンセント計画をするとき、
よくあるのが次のような進め方です。
- 壁ごとにバランスよく配置する
- 部屋の隅に設けておく
- とりあえず平均的な場所・個数にて計画する
もちろん、これ自体が間違いというわけではありません。
ただ、どこで何を使うか
という前提が曖昧なまま決めてしまうと、
実際の使い方とズレが生まれやすくなります。
家具が置かれていない状態の図面では、
「ここで使うだろう」という想像がしづらく、
結果として、
- 使いたい場所から少し遠い
- 家具の裏に隠れてしまう
- 延長コードが前提になる
といった状態になりがちです。
これは、コンセントの数が足りないから起きるというよりは、
コンセントの配置が暮らしと結びついていないことが原因です。
あったら便利。意外と足りないコンセントの具体例

家具配置を前提に考えると、
「ここには欲しかった」と感じやすい場所が見えてきます。
たとえば、
ソファまわり
- スマートフォンの充電スペース
- タブレットやノートPC
- フロアライトや間接照明
- 子どもの学習用機器
→「くつろぐ場所」「普段過ごす場所」だからこそ、
電源を使うシーンは意外と多くあります。
けれど、ソファの位置を決めずに計画していると、
コンセントが少し遠くなりがちです。
ダイニング・キッチン
- ホットプレート
- コーヒーメーカー
- 調理家電
→最近は、便利な調理器具も多く、
生活に取り入れている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、食事中に使いたい家電があっても
テーブルの位置とコンセントが合っていないと、
延長コードが常に出た状態になります。
ワークスペース
- パソコン本体
- モニター
- プリンターや周辺機器
→ここは比較的イメージしやすい場所ですが、
机の向きや配置を想定していないと、
コードが無理な方向に伸びてしまうことがあります。
間接照明・スタンド照明
- 雰囲気づくりのための照明
- ワークスペースの手元灯
- 夜間の補助灯
→これらは「あとから足したくなる」ことが多く、
計画段階では抜け落ちやすいポイントです。
こうして見ていくと、
コンセントは単に「壁に付ける設備」というだけでなく、
家具と一緒に使われるものだということが分かります。
家具の配置をある程度想像できていれば、
「このあたりに欲しい」という感覚は、
自然と具体的になってきます。
コンセント計画は、
設備の話であると同時に、
暮らし方を整理する作業でもあります。
間取り図を見るときには、
家具と一緒に、「ここで何を使うか」まで、
一度立ち止まって考えてみることが大切です。

家族構成と、これからの変化をどう読むか
間取りを考えるとき、
どうしても「今の暮らし」を基準に考えがちです。
もちろん、それは自然なことですし、
今の生活に合っていない家では意味がありません。
ただ、住まいは一度つくると、
簡単には変えられないものでもあります。
だからこそ、今だけでなく、これから先の変化を少しだけ重ねて考える
という視点があると、住み始めてからのズレは起きにくくなります。
子どもの成長で変わる家具・居場所

家族構成の変化で、最も分かりやすいのが子どもの成長です。
小さいうちは、リビングで遊び、
ダイニングでお絵かきや宿題をすることも多いでしょう。
ところが成長とともに、
- 学習スペースが必要になる
- 収納するモノが増える
- 「一人で過ごす場所」が欲しくなる
といった変化が起こります。
このとき、
「どこに机を置くか」
「収納家具はどこに増えるか」
といったことを全く想定していないと、
あとから無理のある配置になりやすくなります。
大切なのは、将来の使い方を完璧に決めることではありません。
- 今はリビングで過ごすことが多くても、将来は個室で過ごす時間が増えるかもしれない
- 個室で過ごす時間が増えると、収納家具ももっと必要になるかもしれない
こうした変化の余地を、間取り図の段階で
少し意識しておくだけでも違ってきます。

「今は使わない部屋」をどう考えるか
新築やリノベーションの相談でよく出てくるのが、
「今は使わないけれど、将来のために用意する部屋」です。
- 子ども部屋
- 客間
- 和室
- 多目的スペース
こうした部屋は、図面上では「余裕」として見えることが多い反面、
住み始めてから使い方に迷いやすい場所でもあります。
使い道が決まっていないと、
- とりあえず物置になる
- 家具のサイズや配置が中途半端になる
- 結果的に無駄な空間となる
といったことが起こりがちです。
ここでも大切なのは、
用途を一つに決め切ることではありません。
- 将来、家具を置く可能性があるか
- どの用途で使うことになりそうか
- 今はどんな使い方をしようか
そんなふうに、現在~未来において
「どう変わる余地があるか」を想像しながら見る
という視点です。
家族構成や暮らし方は、
時間とともに少しずつ変わっていきます。
その変化に、家具やレイアウトで対応できる余白があるかどうか。
それを考えながら間取り図を見ることが、
長く住みやすい家につながっていきます。
図面段階で最低限やっておきたいこと

ここまで読んで、
「じゃあ、最初から全部決めないといけないの?」
と感じた方もいるかもしれません。
結論から言うと、全部決める必要はありません。
家具選びは楽しい作業ですし、
デザインやブランドは、あとからゆっくり決めても問題ありません。
ただし、家が完成した後では調整しにくいポイントだけ、
図面の段階で一度整理しておくことをおすすめします。
決めなくていいこと/考えておくべきこと
まず、無理に決めなくていいのは、
- 家具のブランド
- 細かいデザイン
- 色や素材の好み
これらは、実際の空間を見てからの方が判断しやすく、
後回しでも困ることはあまりありません。
一方で、図面段階で考えておいた方がいいのは、
- 家具のサイズ感
- おおまかな配置
- その家具が担う役割
です。
たとえば、
- ソファは置くのか、置かないのか
- ダイニングテーブルは何人用になりそうか
- テレビを見る暮らしなのか、見ない暮らしなのか
こうしたことが分かるだけでも、
間取りの見え方は大きく変わります。
「これを置くかもしれない」
「このあたりが居場所になりそう」
「〇人用の大きさにしたい」
その程度の想定で十分です。
設計者に伝えておくといい情報
もし、使いたい家具や暮らし方のイメージが少しでもあるなら、
設計者に共有しておくことをおすすめします。
特別な資料を用意する必要はありません。
- ソファは置かなくてよい
- ダイニングでくつろぎたい
- テレビは見ないかもしれない
- リビングで作業することが多い
こうした一言があるだけで、設計側の視点も変わります。
家具の配置が前提になると、
- コンセントの位置
- 通路の余白
- 収納との関係
といった部分も、暮らしに沿った形で検討しやすくなります。
「まだ決まっていないから言わない」ではなく、
「決まっていないけれど、こうなる可能性がある」
と伝えておく。
それだけで、住み始めてからの調整はぐっと楽になります。
まとめ
間取り図(平面図)は、
家づくりの中でとても重要な資料です。
ただし、それは完成形を示す図ではありません。
家具が入り、人が動き、
日々の暮らしが重なって、
はじめて「住まい」として機能し始めます。
住みやすいと感じる家と、
どこか落ち着かない家の違いは、
センスや好みの差ではないことがほとんどです。
間取り図を、
- 部屋の配置として見るだけだったか
- 家具と暮らしが入った状態を想像しながら見ていたか
その視点の違いが、住み心地の差として
表れてくることが多いのです。
すべての家具を決める必要はありません。
でも、
- 家具が入ったとき、どう動くか
- どこでくつろぐのか
- どこが居場所になりそうか
こうしたことを、図面の段階で
一度立ち止まって考えてみる。
それだけで、「住んでからの微妙な使いづらさ」は
かなり減らすことができます。
間取り図は、完成図ではなく、暮らしを想像するための下書き。
少し見方を変えるだけで、
家づくりの納得感は、大きく変わってきます。
次回の記事について
次回は、
「家具後回し」が特に危険になりやすい家のタイプについて、
もう少し具体的に掘り下げていく予定です。
- マンションの角部屋
- 建売戸建て住宅
- リビング続き間の和室がある家
どれも、間取り自体は悪くないのに、
家具レイアウトで悩みやすいケースです。
「なぜそうなりやすいのか」
「どこを見ておけばよかったのか」
実際の相談で多いポイントを交えながら、
分かりやすく整理していきます。
「うちも当てはまるかも?」
と思った方は、ぜひ続けて読んでみてください。



