子どもがベランダや窓から転落してしまう事故——
決して他人ごとではありません。
「ちょっと目を離したすきに」「まさか、そんなところから?」
事故の多くは、そんな“想定外”の状況で起こっています。
今回は建築士の視点から、家庭内でできる転落防止のためのチェックポイントをまとめました。
ベランダだけでなく、腰窓や家具の配置にも気を配ることで、思わぬ事故を未然に防ぎましょう。
なぜ転落事故が起きるのか?

子どもの転落事故は、ほんの少しの油断や「うちは大丈夫」という思い込みから起きてしまいます。
まずは、家庭内でどんな行動や状況が原因になりやすいのかを知ることが大切です。
大人が想像しない“登ってしまう理由”
子どもの行動は予想を超えてきます。
登れないと思っていたものによじ登ったり、窓を自分で開けたり——
大人にとっては想定外の行動でも、子どもにとっては“自然な行動”であることが多いのです。
特に事故が起こりやすいのは、以下のような状況です。
ベランダの手すり周辺に登れるものが置いてある
室外機や収納ボックス、机、椅子など。これらは子どもにとって格好の踏み台になります。
窓のそばにタンスやベッドがある
タンスに登って窓を開けてしまったり、ベッドの上から身を乗り出して落ちてしまったりすることも。
目が覚めたときにパパやママがいない
寝ていた子どもが目を覚まし、家族を探そうとして窓を開けてしまうというケースもあります。
特に夏場などで窓が開いていた場合は、より危険度が高まります。
建築基準法で定められている“最低限の基準”とは?
建物の安全性については、建築基準法でも定めがあります。
屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
このように、2階以上のバルコニーや屋上には高さ1.1m以上の手すりが必要です。
ですが、この高さが「絶対に安全」というわけではありません。
実際には、以下のような条件が揃うと、子どもは簡単にその1.1mを越えてしまいます。
- 室外機の上に乗る
- プランターや収納ボックスに足をかける
- 椅子やベンチなどから手すりに移動する
つまり、手すりそのものよりも、その“周囲環境”が大きなリスクになり得るのです。
「もっと高い手すりをつければ安全?」——実はそう簡単ではない理由
それなら、子どもが乗り越えられないくらい、高い手すりをつければ安心なのでは?——
そう思う方もいるかもしれません。
しかし実は、住宅の設計では「手すりの高さ」が建築面積や延床面積に関わるルールに影響することがあり、希望通りの高さにできないケースもあるのです。
高い手すりがついたバルコニー=床面積にカウントされる可能性あり

ベランダやバルコニーは、開放性が高い場合には床面積に算入しなくてもよいという決まりがあります。
いくつか条件がある中の一例ですが、手すり高さがバルコニーの天井高さの1/2以上になってしまうと
そのバルコニー部分は床面積に含まれてしまいます。
これがどう影響するかというと…
建ぺい率や容積率の制限ギリギリで設計している家の場合、
バルコニーがカウントされると、面積オーバーのため建築確認が下りず、
計画変更を迫られる可能性も。
つまり、「高くすれば安心」という単純な話ではないということです。
ベランダだけじゃない!危険なのは“腰窓”も同じ
意外と見落としがちなのが“腰窓”まわりの安全対策です。
家具の配置次第では、ベランダと同じくらい危険な場所になってしまうこともあります。
窓の近くに家具を置いていませんか?

転落事故の多くはベランダで起きているように感じますが、実は腰窓も危険です。
たとえばこんなケース——
- タンスを窓のそばに置いていたら、子どもが上って窓を開けて転落
- 窓の真横にベビーベッドを置いていたら、赤ちゃんが窓から落ちた
- 二段ベッドを窓のすぐ横に設置したら、遊びながら身を乗り出すなど、思わぬ危険につながった
特に子どもは、「ここまでは登れないだろう」「まさか乗り越えないだろう」という大人の予想を軽く超えてきます。
家具の配置ひとつで、思いがけない事故が起こることもあるのです。
子どもの転落を防ぐために、家庭でできる対策とは?
家を建てるときやリフォームするタイミングだけでなく、今すぐ見直せるポイントもたくさんあります。
日常の中でできる、小さな工夫から始めてみましょう。
ベランダに踏み台になるものを置かない

室外機の位置と周辺環境に注意する
→ 室外機が手すりの近くにあると、子どもが上に乗って手すりを越えてしまう可能性があります。位置を変えられない場合は、子どもがかんたんに近づけない工夫や周囲の環境づくりが大切です。
収納ボックス、ベンチ、椅子などを手すり近くに置かない
→踏み台になりそうなものは、離して置いていても子どもが手すりの近くに動かしてしまう可能性があります。思わぬ使い方をされないよう、そもそもベランダには置かないという判断も大切です。
子ども用の三輪車や遊具をベランダに置かない
→ 三輪車やすべり台などの遊具は、子どもがよじ登ったり手すりに近づいたりする“きっかけ”になりやすく、転落リスクを高めます。ベランダは遊具などで遊ぶ場所としては適切ではありません。不要な遊具は置かず、危険を増やさない環境づくりを心がけましょう。
窓まわりのレイアウトを見直す

腰窓のそばにタンスやベッドを配置しない
→子どもが家具によじ登って窓に手をかけたり、身を乗り出してしまう可能性があります。登れる高さの家具は、窓から離れた場所に配置しましょう。
ベビーベッドを窓に近づけない
→ ベビーベッドに柵があっても、成長とともに立ち上がって窓に手を伸ばすことがあります。窓を開けている時期は特に危険度が高まるため、配置を見直しておくと安心です。
二段ベッドの位置も慎重に
→ 二段ベッドは、上段から窓に接近できてしまうため注意が必要です。遊びの延長で窓に触れたり、乗り出したりするリスクがあります。
あとからでもできる“転落防止グッズ”の活用
新築時やリフォームで対応できなくても、あとからできる方法もあります。
手すりや窓に取り付けられる「転落防止ネット」
→ 例えば「おとさんぞう 転落防止ネット」は、ベランダや窓まわりに後付けできる安全ネットです。工具不要で設置できるため、賃貸住宅にもおすすめ。視界を遮りすぎず、見た目にも圧迫感が少ないのがポイントです。
その他、窓枠に突っ張る形で取り付け可能な柵もあり。
窓に補助錠を取り付ける
→ 万一子どもが本来の窓のカギを自分で開けてしまったとしても、補助錠までは開けられないことが多いため、“二重ロック”としてセーフティネットになります。
→ 防犯対策にもなるため、小さな子どもがいるご家庭では一石二鳥の対策です。後付けできるタイプであれば、工具などを使わずに簡単に取り付けられるものもあります。
FAQ【ベランダの手すりについて】
- ベランダの手すりが1.1mあれば安心ですか?
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法的には基準を満たしていますが、周囲の環境や子どもの成長・動きによって危険になることもあります。特に“登れるもの”があると、1.1mはあっという間に越えられます。
- 窓の横にベビーベッドを置いています。危険でしょうか?
-
落下のリスクはゼロではありません。特に窓が開いている状態や、子どもが立ち上がれる年齢になると危険が増します。配置を見直すか、転落防止柵の取り付けも検討しましょう。窓の二重ロックも有効です。
- 賃貸ですが対策できますか?
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工事不要の転落防止ネットや柵があります。退去時に元に戻せるものを選べば、賃貸でも問題なく対策できます。
まとめ|「登るかも」と思って備える。それがいちばんの予防策
転落事故は、どのご家庭でも起こり得る“身近な危険”です。
しかも、事故はほんの一瞬のすきに起こります。
だからこそ、「うちの子は大丈夫」と過信せず、
登れる場所はないか?家具の配置は大丈夫か?を定期的に見直すことがとても大切です。
少しの工夫で防げる事故があります。
今日からできる対策で、お子さんの安全な暮らしを守っていきましょう。





